鉄は熱を加える事で性質が変わり硬さや粘りが出ます。これによって工具として優れた能力を発揮します。素材によって熱を加えた際の変化の具合が変わってきますので、まずは質の良い鋼材を使用することが工具にとって非常に重要な要素となります。
KEIBA製品の多くは、特殊鋼材である「マルトロイ(CR-V70Cクロームバナジウム鋼、またはSK7MF2高炭素工具鋼の2種)」を使用しています。
マルトロイは当社が大手鋼材メーカー㈱神戸製鋼所製殿に特注している高級素材です。炭素の含有量が一般的な工具鋼と比べて多くなっており、これによって高い硬度が得られ、完成時には抜群の切れ味を生み出します。
しかし、金属は硬さが上がると脆くなります。硬さと同時に"粘り強さ"を出す為の技術や設備が必要となります。
まず大型エアースタンプハンマーを使ってマルトロイを鍛えた後、鋼の組織を安定させるために「焼きなまし」と呼ばれる熱処理を行いますが、当社はこの工程を、一定量ごとに炉で熱する「バッチ式」を採用し14時間かけてじっくりと行っています。これによってマルトロイのような硬度の高い高級素材に、十分な粘り強さが生まれます。
なお、この焼きなまし処理は、大掛かりな設備とコストを要するため、実施していないメーカーもあります。また、実施しているメーカーであっても効率を重視して「コンベア式」で4~5 時間程度の加熱で済ますことが一般的です。
さらに、当社では独自の熱処理設備を有しており、丹念な焼入れ・焼き戻し(熱を加えて製品の硬度を調節する工程)を行っています。これによって強靭な鋼の性質を余すことなく引き出しています。
このような手間を惜しまない工程によって、硬度と粘り強さが高い次元で両立された製品が生まれるのです。KEIBAの製品は「切れ味が長い間持続する」という評価をいただいています。じっくりと手間をかけたものづくりが、この様な高い耐摩耗性や靭性といった品質に繋がっています。